AI用語 第3回 2026年9月28日
モデルとは
もでる
大量のデータから学習した数値(パラメータ)の巨大な集まりで、入力に対して出力を計算する生成AIの本体です。
YouTube「AI用語の教科書」第3回の動画です。
生成AIの「モデル」とは、入力を受け取って出力を計算する「箱」のことで、生成AIの本体です。ChatGPT や Claude はサービスの名前で、その裏では GPT 系や Claude 系のモデルが計算をしています。モデルの中身は、計算の手順と、膨大な数の調整できる数値(パラメータ)の組み合わせです。経営の立場では、モデルを「選び直せる部品」と捉え、性能・費用・更新の扱いを決める単位だと考えるとよいでしょう。
モデルとは、現実を単純化して計算できる形にしたもの
「モデル」はAI特有の言葉ではありません。プラモデルは、本物の車や飛行機を小さく単純にしたものです。天気予報の数値モデルは、実際の大気の動きを計算できるように単純化したもので、単純化しているからこそ当たり外れがあります。
動画では、AIのモデルもこれと同じで、人間の判断をコンピューターで再現できるように単純化したものだと説明しています。写真の猫と犬を見分けるAIなら、人間が見分けるときの判断の軸を計算に置き換えたものがモデルです。
形としては「何かを入れると何かが出てくる箱」と考えるとわかりやすいでしょう。写真を入れると「猫」と出ます。部屋の広さと駅からの距離を入れると、家賃の予想が出ます。対話AIも根本は同じで、それまでの文章を入れると、次に来そうな語を出します。これを何度も繰り返すことで、人が書いたような文章になります。
中身は「計算の形」と大量の「つまみ」
箱の中では何が起きているのでしょうか。動画では家賃の予想を例にしています。「広さ×いくつ+駅からの近さ×いくつ+基本の金額」という計算を考えます。この「いくつ」の部分を変えると、予想される家賃が変わります。広さを重視するなら広さの数字を大きくし、駅からの近さを重視するなら駅の数字を大きくします。
この調整できる数字がパラメータです。動画では、ラジオやミキサーの「つまみ」にたとえています。家賃の例ではつまみは3つですが、大規模言語モデルでは桁が違います。2020年に発表された GPT-3 は1,750億個のパラメータを持っています。Meta が2024年に公開した Llama 3.1 は、80億・700億・4,050億の3種類の大きさで提供されました。「700億パラメータのモデル」とは、つまみが700億個あるモデルという意味です。
つまみがすべて適切な値にそろったとき、モデルは賢く振る舞えるようになります。その値をデータから自動で探す作業を「学習」と呼びます(詳しくは「学習」の項をご覧ください)。
普通のプログラムとの違い:ルールを人が書かない
通常のプログラムでは、人がルールを書きます。迷惑メールの判定なら、「当選という語があれば迷惑メール」「知らない差出人なら迷惑メール」と一つずつ決めていきます。
ただ、この方法には限界があります。猫の写真を見分けるルールを書こうとしても、「耳がとがっていてひげがある」では犬と区別できませんし、角度によっては耳も見えません。人が書くルールでは対応しきれない場面が出てきます。
AIのモデルは発想が逆です。ルールを人が書くのではなく、つまみの値としてデータから見つけさせます。そのため、作った側でも「なぜこの答えになったか」を一つのルールとして説明しにくくなります。業務で使うときに、結果の確認や説明の手順が別に必要になるのはこのためです。
経営にとっての意味:モデルは選び直せる部品
同じ会社のモデルでも、大きさと料金には幅があります。Anthropic の API の料金(100万トークンあたり、2026年10月5日時点)は次のとおりです。
| モデル | 位置づけ(公式の説明) | 入力 | 出力 |
|---|---|---|---|
| Claude Haiku 4.5 | 最も速い | 1ドル | 5ドル |
| Claude Sonnet 5.5 | 速さと賢さの両立 | 2ドル | 10ドル |
| Claude Opus 5.5 | 長時間のエージェント作業・知識労働 | 4ドル | 20ドル |
| Claude Fable 5.1 | 高度な推論・長期のエージェント作業 | 10ドル | 50ドル |
最上位と最も安いモデルでは、単価が10倍違います。定型の分類や要約は小さいモデルで足りることが多く、用途ごとに使い分けると費用を抑えられます。
モデルには寿命もあります。Anthropic は公式ページで、各モデルの提供終了の時期を示しています。また API では、使うモデルの版を指定して固定できます。業務に組み込むなら、版を固定したうえで、切り替えの前に評価し直す手順を用意しておきましょう。
よくある誤解
モデルの中に知識がそのまま保存されている。 中にあるのは、つまみの数値だけです。「東京は日本の首都」という文がどこかに書かれているわけではなく、膨大な数値の組み合わせの中に染み込んでいます。動画では、だからこそAIはもっともらしい間違い(ハルシネーション)をすると述べています。
使うたびに賢くなっている。 普段の利用では、つまみは固定されています。会話のたびに書き換わるわけではなく、つまみを変えるのは提供企業が学習をさせるときだけです。製品によっては会話の内容を覚える機能がありますが、これはモデルの外側に情報を保存して渡す仕組みで、モデル自体が学び直しているわけではありません。
知識は常に最新である。 モデルが知っているのは、学習に使ったデータの範囲までです。Anthropic はモデルごとに知識が確かな時点を公表しており、たとえば Claude Haiku 4.5 は2025年2月、Claude Opus 5.5 は2026年6月です。最新の情報が必要な業務では、検索や社内文書を渡す仕組みと組み合わせましょう。
パラメータが多いほど常に優れている。 大きさは性能の目安の一つにすぎません。OpenAI の研究では、人のお手本と評価で調整した13億パラメータのモデルの出力が、1,750億パラメータの GPT-3 の出力より評価者に好まれました。
経営者が確認すべきこと
- どの業務に、どの水準のモデルを当てるか。 すべての業務を最上位モデルにする必要はありません。業務ごとに必要な精度と、許容できる費用を決めましょう。
- モデルの版と更新の扱い。 使っているモデルの版、提供終了の予定、切り替え時の評価手順を把握しておきます。
- データの扱いは契約で決まる。 入力が学習に使われるかどうかは、モデルではなく提供条件で決まります。OpenAI と Anthropic はいずれも、法人向けの製品と API のデータを標準では学習に使わないと公表しています。自社の契約がどちらに当たるかを確認しましょう。
- 出力の確認体制。 モデルは数値の計算で、もっともらしい答えを出します。誤りが許されない業務では、人の確認を工程に組み込みます。
動画では、新しいモデルが出るたびにパラメータ数や性能が話題になり、そのアップデート次第で利用者が受けられるサービスの内容も大きく変わると述べています。「どのAIを使うか」よりも、「どの業務に、どのモデルを、どう評価して当てるか」を決めることが、成果を左右するでしょう。
関連する用語
出典
- 1Attention Is All You NeedarXiv (Vaswani et al.)・2017-06-12
- 2On the Opportunities and Risks of Foundation ModelsarXiv (Bommasani et al.)・2021-08-16
- 3Language Models are Few-Shot LearnersarXiv (Brown et al.)・2020-05-28
- 4Introducing Llama 3.1: Our most capable models to dateMeta・2024-07-23・確認 2026-10-05
- 5Training language models to follow instructions with human feedbackarXiv (Ouyang et al.)・2022-03-04
- 6Models overviewAnthropic・確認 2026-10-05
- 7Is my data used for model training?Anthropic Privacy Center・確認 2026-10-05
- 8Business data privacy, security, and complianceOpenAI・確認 2026-10-05