AI用語 第2回 2026年9月21日
AIエージェントとは
えーあいえーじぇんと
目標を与えると、生成AIが自分で手順を考え、道具を呼び出しながら複数ステップの作業を進める仕組みです。
YouTube「AI用語の教科書」第2回の動画です。
AIエージェントは、依頼を完了まで進めるために、生成AIのモデルに道具と作業の流れを組み合わせた仕組みです。質問に1回答えて終わるチャットと違い、「考える→道具を使う→結果を見て次を決める」を繰り返し、複数の作業をつないで1つの依頼を片づけます。ここでいう道具とは、社内文書の検索、表計算、メール送信、業務システムの API などのことです。
モデルとエージェントの違い
動画では、エージェントを「モデルを含んだ統合的な仕組み・環境」と説明しています。モデルは、入力を渡すと回答を返すAIの頭脳にあたります。エージェントは、そのモデルをプログラムで囲み、道具を渡し、作業の流れや途中経過を引き継げるようにしたものです。
OpenAI の手引きも、エージェントを「利用者に代わって自律的にタスクを完了するシステム」と定義し、構成要素をモデル・道具・指示の3つに分けています。同じモデルを使っていても、囲むプログラムの作りによって挙動は変わります。動画では、Claude と OpenAI で挙動が違って見えるのはこの実装の差によるところがあり、モデルの進化とエージェント側の実装の進化の両方が必要だと述べています。
なお動画では、最近は ChatGPT の通常のチャット画面でも長く作業してくれることがあり、モデルが進化するほどチャットとエージェントの差はあいまいになっていくと見ています。
仕組み:同じ手順をぐるぐる回す
動画では最小構成の疑似コードを使い、エージェントの動きを4つの手順で説明しています。
- AIに考えてもらう。 これまでの依頼と実行結果をまとめた「履歴」と、使える道具の仕様をモデルに渡し、次の一手を返してもらいます。
- 完成していれば終わる。 回答ができていれば終了し、まだなら次へ進みます。
- 道具を実行する。 モデルが「この道具をこの条件で使ってほしい」と指示し、エージェント側のプログラムが実際に実行します。
- 結果を履歴に足す。 実行結果を履歴に追記し、手順1に戻ります。
動画の疑似コードでは、この繰り返しを最大8回までとしています。たとえば「会議資料を調べて要点を教えて」と頼むと、モデルが検索を指示し、プログラムが検索を実行して「関連資料3件」を返します。モデルはそれを読んで、次の一手を決めます。
ここで大事なのは、止めどころを決めるのがプログラム側だという点です。動画では、モデルは聞かれれば答えてしまうので、最終回答を返して終えるか、追加で道具を使うか、トークンの上限などに達したら中断するか、といった分岐はエージェントのコードが受け持つと説明しています。OpenAI の手引きも、終了条件の例として最終出力、エラー、最大回数への到達を挙げています。
経営にとっての意味:費用・品質・責任
費用が読みにくくなります。 履歴は回るたびに積み上がり、毎回モデルへ送り直されます。往復が増えるほど1回あたりの入力トークンが増えるため、チャットより消費量が大きく、1件あたりの費用もぶれやすくなります。Anthropic も、エージェントは費用が高くなりやすく、誤りが積み重なるおそれがあると指摘しています。
誤りが連鎖します。 途中で誤った検索結果や判断が履歴に入ると、その後の手順はそれを前提に進みます。最終結果だけを見ても、どこで間違えたかは分かりません。
実行の責任が生じます。 読むだけのチャットと違い、エージェントは送信・登録・発注といった操作を実際に行えます。セキュリティ団体の OWASP は、必要以上の機能・権限・自律性を持たせることを「過剰な権限委譲(Excessive Agency)」という独立したリスクに挙げています。
よくある誤解
| 誤解 | 実際 |
|---|---|
| エージェントは新しい種類のAIモデルだ | モデルを道具と手順で囲んだ仕組みです |
| 賢いモデルを選べば挙動も決まる | 道具の設計や終了条件など、実装で挙動は大きく変わります |
| 何でも自律的に任せられる | 誤りの連鎖と費用増があり、向く業務は限られます |
| 複雑な仕組みほど成果が出る | Anthropic は、まず最も単純な方法を試し、必要なときだけ複雑にするよう勧めています |
OpenAI の手引きは、エージェントが向く業務として、判断が複雑なもの、ルールが複雑すぎて保守が難しいもの、文書や会話など形の決まっていない情報を多く扱うものを挙げています。手順が完全に決まっている業務なら、決め打ちの自動化で足りることも多いでしょう。
経営者・事業責任者が確認したいこと
- 任せる範囲を分けましょう。 読む・調べる作業と、送信・発注・削除のように取り消せない操作を分け、後者には人の承認を挟みます。OpenAI の手引きも、取り消せない操作や金額の大きい操作は、信頼性が確認できるまで人が確認するよう勧めています。
- 権限を絞りましょう。 エージェントに渡すアカウントや API キーは、その業務に必要な範囲にとどめます。
- 止める条件を決めましょう。 最大の繰り返し回数、トークンや費用の上限、失敗が続いたら人に引き継ぐ条件を設計に入れておきます。
- 記録を残して検証しましょう。 何を読み、どの道具を何の条件で使い、何を実行したかの履歴を保存し、定期的に抜き取りで確認します。導入前には、本番と切り離した環境で十分に試しておくと安心です。
- 外部の情報を読ませるなら対策を前提にしましょう。 Web ページや受信メールに紛れた指示にエージェントが従ってしまう、プロンプトインジェクションへの備えが必要です。
動画では、エージェントを「要求を実行し、結果を戻して、モデルを呼び直す」仕組みとまとめています。この繰り返しの中身と止めどころを説明できるかどうかが、導入を判断する材料になるでしょう。
関連する用語
出典
- 1Building Effective AI AgentsAnthropic
- 2ReAct: Synergizing Reasoning and Acting in Language ModelsarXiv (Yao et al.)・2022-10-06
- 3A practical guide to building agentsOpenAI・確認 2026-10-05
- 4LLM06:2025 Excessive AgencyOWASP GenAI Security Project・確認 2026-10-05